【化学物質の取り扱い法令はSDSを確認しましょう】
衛生管理者の職務に、「作業環境の衛生上の調査」や「作業条件、施設等の衛生上の改善」があります。
化学物質は、安全に取り扱いをしなければ事故につながりますので、化学物質の管理を行うことも衛生管理者の仕事になります。
化学物質の取り扱いに際し、多くの法令で規制がされています。
例えば、ガソリンスタンドではガソリンという化学物質を取り扱います。消防法により、乙4の資格を持った従業員が必要です。(規制法の緩和で今は顧客がセルフ給油ができるようになりました)
関連法令は大変多く、曝露対象で分類した場合、「労働環境側」「消費者側」「環境側」3つに分類されます。今回は労働者を守るために必要な、「労働環境」にフォーカスして執筆します。
1.化学物質の取り扱いについて、全てはSDSに
化学物質の取り扱いに詳しくない者が、もし衛生管理者になった場合、一度目を通してほしいのが、「SDS」です。化学物質の取り扱いは全てこの文書に記載されてます。
SDSとは
「SDS」とはSafety Data Sheet(安全データシート)の略で、その製品の危険性や有害性、取扱いに関する情報を記載した、いわば取扱説明書のことです。有害な化学物質を含んだ製品には全てSDSがあり、有害でない場合は努力義務で交付されています。化学薬品であればインターネット上に公表され、ダウンロードできることが多いです。
例えば、エタノール(手の消毒に一般的に使用されている化学物質)だと、

このようにSDSが記載されています。記載する項目と内容は定められているので、どの製品も同じ並びとなっています。下へ見ていくと、途中、応急処置や保管方法の記載もあります。
そして15番に、「適用法令」があります。ここを見ましょう。すると、「労働安全衛生法」「消防法」など記載されています。ここを見て、どの法令を守らないといけないかを判断します。

2.労働環境(従業員等への健康のため)の法令
SDSの内容を把握したところで、法令をみていきます。
化学物質を取り扱う労働環境、いわば作業者・従業員に対して事業者が対応する法令は、
ほとんどは労働安全衛生法の管理下にありますが、
1.農薬…農薬取締法
2.毒物劇物…毒物劇物取締法
3.有機溶剤…消防法、有機溶剤中毒予防規則(労働安全衛生法)
4.他有害物質に、労働安全衛生法の作業主任者関係で、①特定化学物質及び四アルキル鉛等・②鉛・③石綿・④石綿取り扱い・⑤有機溶剤・⑥廃棄物処理施設があります。
となり、エタノールを例にした場合だと、
労働環境を守るのに関係する法令は「労働安全衛生法」「消防法」になります。
大気汚染防止法などは自然や消費者の環境側の側面になります。
農薬取締法
農薬取締法は、使用者の保護についての記載は特にみられませんでしたが、環境省のホームページに、農薬取締法のページがあります。ここに農薬工業会「農薬を使用する方へ」のリンクがあるので、こちらから農薬の使用上の注意を確認しましょう。
毒劇物取締法
毒物及び劇物取締法は、日常流通する有用な化学物質のうち、主として急性毒性による健康被害が発生するおそれが高い物質を毒物又は劇物に指定し、保健衛生上の見地から必要な規制を行うことを目的としています。
具体的には、毒物劇物営業者の登録制度、容器等への表示、販売(譲渡)の際の手続、盗難・紛失・漏洩等防止の対策、運搬・廃棄時の基準等を定めており、毒物劇物の不適切な流通や漏洩等が起きないよう規制を行っています。
引用&リンク:厚生労働省
消防法
消防法では、火災発生の要因となる可能性が高い物を「危険物」として定めており、その取扱いについては消防法を順守しなければなりません。正しい消防設備や保管数量のもと、作業環境を整え、やけどや火災、爆発による怪我や事故から労働者を守りましょう。
有機溶剤中毒予防規則 など
有害物質の各種予防規則には、取り扱い方法について細かく記載されています。
取り扱う時間数と物質の作業環境測定や、健康診断、保護具、職場の掲示物などが記載されています。詳細については各種予防規則のテキストや法令を確認してください。
労働安全衛生法
化学物質に関する、労働安全衛生法については大幅に改正されました。別途記載します。
3.関連する資格・講習など
化学物質の取り扱いに際し、持つべき資格は以下の通りです。
化学物質管理者
保護具着用管理者とともに、新しく設けられた役割です。技能講習が開かれています。
作業主任者技能講習
労働災害を防止するための管理を行うのが作業主任者で、一定の作業を行う場合、選任しなければなりません。化学物質の中の有害物質に関する作業主任者は下記の通りです。

引用:長崎労働局
4.参考にしたいリンク
- 職場の化学物質管理総合サイト「ケミサポ」(独立行政法人労働者健康安全機構 労働安全衛生総合研究所)
こちらは初心者に優しい解説が載っています。 - 職場における化学物質対策について (厚生労働省)
まとめ
化学物質に関する法令を知りたい場合、兎にも角にも、まずは実際に取り扱う化学物質の製品の「SDS」をダウンロードして15.関係法令を見ましょう。
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