[2025.3.22現在の情報です。]
会社の衛生管理者になったら、まずは最低限こなしておきたいと思うはずです。同じ「義務」という言葉でも、罰則が生じるものとそうでないものがあります。罰則については、労働安全衛生法の第12章にあたり、第115条の3~第123条に記載されています。
中でも衛生管理者に関する条文は大半が第120条です。
その他は下部に記載しております。
衛生管理者に関する条文
第二種衛生管理者の場合
- 感染症等病者の就業禁止違反懲役(6ヶ月・罰金50万円以下)
- 必要数の衛生管理者の未選任(罰金50万円以下)
- 安全衛生委員会の未設置(罰金50万円以下、規模による)
- 雇入れ時の安全衛生教育(罰金50万円以下)
- 必要な健康診断の未実施・未通知・未保存(罰金50万円以下)
- 法令で決められた文書の未保管(罰金50万円以下)
- 労基署や労働局から労災に係る直接指示(改善)に違反した場合(罰金50万円以下)
第一種衛生衛生管理者の場合 (第二種+有害業務)
- 有害危険業務(作業主任者)の未選任(懲役6ヶ月・罰金50万円以下)
- 事業主が行う健康障害・労災対策などの必要な措置(懲役6ヶ月・罰金50万円以下)
- 危険有害業務の特別教育(懲役6ヶ月・罰金50万円以下)
- 就業制限のある業務の資格管理(懲役6ヶ月・罰金50万円以下)
- 作業環境測定の未実施・未保存(懲役6ヶ月・罰金50万円以下)
- 有害業務の作業時間の超過(懲役6ヶ月・罰金50万円以下)
- 危険や有害機器の定期自主検査の未実施・記録の未保管(罰金50万円以下)
- 有害危険業務の法令表示や通知をしない(罰金50万円以下)
ほとんどの企業の衛生管理者が覚える必要がない、第115条の3~118条、第121~123条は、当サイトの後編である、「労働安全衛生法で罰則があるもの 後編:衛生管理者が関係しないもの」に記載します。
下記に法令を記載しますが、見やすいように漢数字は数字に変換し、なるべくそのまま載せています。引用先は全て「労働安全衛生法」からです。
労働安全衛生法 第119条と第120条の詳細
第119条… (懲役6ヶ月・罰金50万円以下)
次の各号のいずれかに該当する者は、6ヶ月以下の懲役又は50万円以下の罰金に処する。
第119条第1項…様々な業種に係ること
下記に違反した者。
第14条:作業主任者が必要な業務にかかわらず、未講習・未選任
第20条:機械器具、危険物質、エネルギーの危険に対する必要な措置実施違反
第21条:作業方法、墜落土砂等の崩壊の危険防止措置違反
第22条:原材料、ガス、騒音、振動、計器監視など精神的疲労、有害物などによる健康障
害防止措置違反
第23条:通路階段等の保全、彩光、照明、休養、清潔等の健康、風紀及び生命に必要な措
置違反
第24条:作業行動から生じる労働災害防止措置違反
第25条:急迫した危険に対する作業中止、避難に必要な措置違反
第25条の2第1項:労働者の救護に関し必要な機械等の備付け及び管理
第30条の3第1項 or 第4項:その他政令で定める業種に属する事業で、元方事業者が請負者に対しても安全措置を講ずる
第31条第1項:特定事業の注文者の講ずべき措置
第31条の2:化学物質の製造、取り扱い設備の請負者に対し注文者の災害防止対策措置違反
第33条第1項若しくは第2項:政令で指定された機械等について貸与者が講ずべき措置の違反
第34条:建築物貸与者の講ずべき措置の違反
第35条:重量が一トン以上のものの表示違反
第38条第1項:特定機械における許可や検査の違反
第40条第1項:特定機械の検査を受けていない使用行為
第42条:特定機械以外の機械で、危険な場所や有害業務に就く場合に、規格に適合していない安全装置を使用する行為
第43条:動力により駆動される機械等で防護措置のないものを譲与・貸与する行為
第44条第6項:個別検定(ものを1つずつ検定)の検定合格の非表示
第44条の2第7項:型式検定(大量生産の一部)の検定合格の非表示
第56条第3、4項:労働安全衛生法施行令の第17条に規定する物質の製造方法や設備の不備
第57条の4第5項:有害危険物の表示違反
第57条の5第5項:有害危険物の学識経験者の秘密保持違反
第59条第3項:危険有害業務の安全又は衛生のための特別の教育
第61条第1項:就業制限のある業務を無資格者が行う行為
第65条第1項:作業環境測定の実施と記録の保存違反
第65条の4:潜水業務等、健康障害防止のための作業時間制限違反
第68条:感染症等病者の就業禁止違反
第89条第5項(第89条の2第2項において準用する場合を含む。):計画の届出に対する学識経験者の秘密保持違反
第97条第2項:労働者による労働局長、監督署長への申告に対する、不利益な扱い防止違反
第105条:面接指導など健康診断等に関する秘密漏洩違反
第108条の2第4項:疫学的調査に従事した者の秘密漏洩違反
第119条第2項…厚生労働大臣からの命令違反
下記の規定による命令に違反した者
第43条の2:動力により駆動される機械等を譲渡・貸与された側の通知命令違反
第56条第5項:労働安全衛生法施行令の第17条に規定する物質の製造方法や設備の改善命令違反
第88条第6項:計画の届出に係る工事若しくは仕事の開始を差し止め、又は当該計画を変更の命令違反
第98条第1項又は第99条第1項:労働局長、監督署長の作業の停止、機械等の使用禁止命令違反
第119条第3項…有害危険物の表示
第57条第1項:有害危険物の表示
表示をせず、若しくは虚偽の表示をし、又は同条第2項の規定による文書を交付せず、若しくは虚偽の文書を交付した者
第119条第4項…就業制限の特例
第61条第4項:就業制限の特例(職業訓練生)
に基づく厚生労働省令に違反した者
第120条…(罰金50万円以下)
下記の規定のいずれかに該当する者は、五十万円以下の罰金に処する。
第120条第1項…様々な業種に係ること
第10条第1項:事業場の規模ごとに統括安全管理者を選任し、安全管理者・衛生管理者の統括をする
第11条第1項:事業場の規模ごとに安全管理者を選任し、安全に関する技術的事項を管理させる
第12条第1項:事業場の規模ごとに衛生管理者を選任し、衛生に係る技術的事項を管理させる
第13条第1項:事業場の規模ごとに産業医を選任し、健康管理を行わせる
第15条第1、3、4項:統括安全衛生責任者を選任し、その者に元方安全衛生管理者の指揮をさせる(業種による)
第15条の2第1項:元方安全衛生管理者を選任し、技術的事項を管理させる(業種による)
第16条第1項:安全衛生責任者を選任する
第17条第1項:事業場の規模ごとに安全委員会を設けなければならない
第18条第1項:事業場の規模ごとに衛生委員会を設けなければならない
第25条の2第2項:労働者の救護に関し必要な事項についての訓練を行う(業務による)
第26条:事業者が行う健康障害防止等の措置に対して労働者は必要な事項を守る
第30条第1項:特定元方事業者の協議組織の設置及び運営
第30条4項:特定元方事業者による労働者の安全又は衛生のための教育に対する指導及び援助
第30条の2第1項、第4項:特定元方事業者による労働災害を防止措置
第32条第1項~第6項:請負人の講ずべき措置等
第33条第3項:機械等貸与者等の講ずべき措置等
第40条第2項:特定機器の検査証なしの貸与や譲渡
第44条第5項、第44条の2第6項:検定合格の虚偽表示
第45条第1、2項:機器の定期自主検査
第57条の4第1項:新規化学物質における有害性等の報告
第59条第1項(同条第2項において準用する場合を含む。):雇入れ時の安全衛生教育
第61条第2項:作業者の無免許・就業制限による違反(ガス溶接・ボイラー等)
第66条第1項から第3項:医師による健康診断・特殊健康診断・歯科検診(指定の有害業務)
第66条の3:↑の健康診断の記録と保存
第66条の6:↑の健康診断の結果の通知
第66条の8の2第1項:研究開発従事者への医師の面接指導(ひと月100時間の時間外)
第66条の8の4第1項:高度プロフェッショナルへの医師の面接指導(ひと月100時間の時間外)
※高度プロフェッショナル制度とは、高度な専門知識やスキルを有する労働者を対象に、労働基準法の労働時間や割増賃金に関する規定を適用しない制度です。2019年4月の働き方改革関連法の施行により導入されました。
第87条第6項:許可なく「日本労働安全衛生コンサルタント会」の名称を使うこと
第88条第1項から第4項:危険な場所や有害なものに関する工事の計画の届出(規定の日までに提出)
第101条第1項:法令を見やすい場所に掲示して周知すること
第103条第1項:法律又はこれに基づく命令の規定に基づいて作成した書類を正しく保管すること
第120条第2項…労基署や労働局からの、労災を防止するための指示
第11条第2項(第12条第2項及び第15条の2第2項において準用する場合を含む。):労働基準監督署長が必要に応じて、安全管理者・衛生管理者・元方安全衛生管理者の増員を命令すること
第57条の5第1項:化学物質を製造や使用している事業者に化学物質の有害性の調査を報告すること
第65条第5項:都道府県労働局長から作業環境測定の指示を受けた時
第66条第4項:都道府県労働局長健康から臨時の健康診断の指示を受けた時
第98条第2項:労働災害を防止するための使用停止命令等
又は第99条第2項:都道府県労働局長らが労働災害を防止するため労働者への直接指示ができる
の規定による命令又は指示に違反した者
第120条第3項…検定品への合格表示
第44条第4項又は第44条の2第5項の規定による表示をせず、又は虚偽の表示をした者
解説:個別検定に機械や保護具等が合格したら、その装置に合格表示をする。合格品の表示義務。
第120条第4項…全ての事業場
第91条第1項、第2項:【労働基準監督官】の権限
第94条第1項:【産業安全専門官】及び【労働衛生専門官】の権限
第96条第1項、第2項、第4項:【厚生労働大臣等】の権限
により、立入り、検査、作業環境測定、収去若しくは検診を拒み、妨げ、若しくは忌避し、又は質問に対して陳述をせず、若しくは虚偽の陳述をした者
第120条第5項…事業者や労働者等に対して、厚生労働省や労基署への対応
第100条第1項又は第3項の規定による報告をせず、若しくは虚偽の報告をし、又は出頭しなかつた者
第120条第6項…労働安全コンサルタントの業務
第103条第3項の規定による帳簿の備付け若しくは保存をせず、又は同項の帳簿に虚偽の記載をした者
まとめ
衛生管理者の職務と照らし合わせてみると、以外と罰則は少ないように思います。ただ、労基署から是正勧告を受けた場合、改善をしなければ罰則となる可能性がありますので、今一度、職務内容を把握しておきたいところです。労基署への申告を行っても、労働者を守るように法律で定められているので、安心して相談できますね。
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